〇金沢 魔所の夕日
金沢には、魔所といわれていたところがいくつかあります。
その一つである卯辰山の宝泉寺を訪ねました。
金沢のひがし茶屋街の奥に、金沢5社のひとつで格式ある宇多須神社があります。
その横の急傾斜の坂・子来坂(こぎざか)を5分ほど登ると、右側に階段があり、さらに登ると宝泉寺があります。
本堂の前には、何代目かの五本松がありますので、この寺を五本松といい習わしています。
ここに天狗が棲んでいたのであり、こんな話があります。
ある真夜中に、剣道の免許を許された男たちが、その肝試しに五本松(卯辰宝泉寺摩利支天)に参詣したのですが、暗闇の中で御堂が大音響とともにつぶれてしまったのです。男たちは、たいそう驚いて、あとも見ずに逃げ帰りました。
翌朝になって男たちは、お堂がどんな具合になっているのかを見るため五本松にやってきましたが、つぶれたはずのお堂はもとどおりだったので、またびっくりしました。
どうやら天狗がいたずらをしたようだ。
免許皆伝となった男たちが、夜中に天狗が出るという噂の五本松にやってきたのは、肝試しのためだったのか。
そんな男たちに天狗は、まだまだそれくらいの腕で、ここにやってくるのは早すぎると、一撃を加えたように読みとることができます。
天狗の「いたずらタイプ」の昔話のようです。
この五本松は卯辰山の中腹にある、見晴らしの良い高台にあります。
眼下に浅野川と浅野川大橋があり、右下にはひがし茶屋街、南正面には金沢城を望んでいます。
ここは金沢の瓦屋根が多く残る風景を望むことができる格好のところである。以前は、瓦屋根のかなたには、日本海まで見ることができました。
ここで特筆すべきは、以前の金沢市のパンフレットによれば、ドナルド・キーンがここからみる夕日は世界で一番きれいだといったと記されていたことなのです。
その時、この典拠はどこかと思いたち、パンフレットを作製した金沢市に問い合わせてみました。答えは、業者に任せてあるのでわからないという返事でした。
さらに石川県立図書館で聞いたところ、図書館からドナルド・キーン本人にメールで確かてくれたのです。キーン本人の答えは、「それは覚えていない」という返事で、真相は闇の中で終わりました。
世界で一番きれいな夕日の謎は残りましたが、五本松からみる金沢の風景は、私も最も気に入っているところです。昔の金沢の風景が、ちょっぴり感じられるからです。
観光客は比較的少ないところなので、天狗の松の前に立って、金沢城や城下の町を、ゆっくりと眺めることができます。
ひがし茶屋街からだと、30分ほど時間をとれば往復することができます。金沢のリピーターに、とびきりのおすすめの場所です。
そこに立って、天狗の話を思い出してください。
夕日の時間帯なら、なおいいでしょう。
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