改訂版 そもそも『三州奇談』とは何か (1)


ブログに『三州奇談』の現代語訳を投稿しています。

そのほか、ときどき『三州奇談』について書いています。

これから3回にわたって、その『三州奇談』とはいかなるものであるのか、なぜ読んでいるのかということを、書いてみたいと思います。



意外に思われるかもしれませんが、私ははじめは奇談集『三州奇談』を、歴史学の研究対象として読んでいました。

読み始めて5年、これについて調べたものが一定の分量に達したこともあり、さらにこの分野の研究がそれほど多くはないこともありますので、これから読む人の一助に、あるいは奇談好きの人のために、まとめてみようとしました。



おととし自費出版、『堀麦水の「三州奇談」を読む』を上梓しました。

その後は趣味として各話の現代語訳をやっています。



それをもとに、より多くの人の目に触れるようブログでときどき書いています。



今回から3回のシリーズでは、『三州奇談』のアウトラインはどういうものか、みてゆきます。








1.『三州奇談』は編著・堀麦水の加賀・能登・越中の奇談集



『三州奇談』は加賀・能登・越中の奇談を集めたものです。



全国各地には興味深い奇談の数々が残されていますが、金沢には『三州奇談』が語り継がれました。



ここには、この地域独自、固有のものがある一方、ほかの地域と共通のモチーフの話も、無論入っています。





『三州奇談』は加賀・能登・越中の奇談集で、金沢が多いなどすこし地域のかたよりはあありますが、石川県と富山県の各地域の話が網羅されています。



成立は宝暦から安永年間なので、十八世紀半ばすぎから後半に書かれました。

本編は正編99話、続編50話からなっており、一話読み切りの形式となっている。

 

編著、堀麦水(17181783)は、金沢・竪町の蔵宿に生まれ、俳諧師・随筆家として活躍し、江戸・京坂にも流寓しています。当時としては変化にとんだ、自由で知的な人生を送った人物といえましょう。いわゆる地方知識人だったのです。



さらに麦水は、なんと加賀藩主の将棋の師匠として、席を同じくする機会もあり、家老との交流もありました。



『三州奇談』は、その名のとおり奇談奇聞集なので、狐狸、天狗など妖怪、魔所などが登場し、それをとおして地域の伝承・伝説が語られるものです。



しかも、よく読んでゆくと、話の中に歴史・史実が組みこまれていることに驚かされます。単なる奇談ではないことがわかります。

 

特筆すべきは、ほとんどすべての話に、地名と年号が記されていることなのです。ここからわかる特定された地域と年代によって、歴史面からの研究が可能となるのです。





『三州奇談』には、もととなる種本があったようですが、それを増補したのが麦水だと理解してよいでしょう。



『三州奇談』の内容は、「荒唐無稽のことと思われるが、それは麦水自身のねつ造ではなく、そうした奇説怪談が民間にあったのを採集したことに、本書の価値と存在の理由がある」(日置謙)との評があります。

 

こうしたところから、近世知識人として麦水がみた世界、すなわち近世の人々がなにをみて、それについてどのように考えたかを読みとることができます。



また、当時の人々が妖怪の出現をどのようにみて、感じとり、解釈していたかも推し測ることができるのです。



今回はここまで。次回に続きます。


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