イノシシと人間の今昔 その2 アニミズム

イノシシと人間の今昔 その2 アニミズム


 イノシシと人間を考える、その2である。

 イノシシは江戸時代から現在に至るまで、甚大な農業被害をもたらしている。それなのに人間はイノシシ撲滅に効果的な対策を打ち出せないまま300年以上経過している。最新の技術なら退治できそうなのに、そうはなっていない。

 石川県津幡町の杉瀬に、猪塚がある。これは江戸時代、農民が捕えたイノシシを慰霊した記念碑である。

 人に悪さをするイノシシだが、それでも殺したあとには塚を築き供養したのである。
当時は日常的にいろんな獣と接する機会が多く、動物とは近しい間柄だという意識があった。
 また日本ではアニミズム的感覚が根付いており、死んだ者は供養せずにはいられなかったという思いもある。現小松市には虫塚まである。

 このような塚を築いた理由は、人間側のイノシシへの思いがあったからなのである。イノシシを徹底的に撲滅することができなかった理由は、こうした所にあるのかも知れない。

 もうちょっと効果的に徹底的な対策をとることはできる可能性はあるが、そうしなかったのには、抵抗があったのかも知れない。アニミズムである。

 狩りを生業とする狩猟者には、イノシシを千匹獲ったら千匹塚を立て、白色のイノシシは神の使者として撃つことを忌んだという伝承がある。
  
 里の人がやるイノシシ退治の際には、狩猟者も加わっていた。猪塚を築いたのは、彼ら猟師たちの風習をとり入れたのではなかろうか。
  
 悪さをするイノシシであったが、現代の感覚とはちょっと違うところがあったと思われる。
 イノシシは固有の霊魂を有していたと、人間は理解していたのである。

つづく


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