片袖の女と厚化粧

先日、短編小説「片袖の女」を投稿したが、これについての余談として読んでいただこう。「片袖の女」は白昼、倶利伽羅峠に現われた厚化粧の幽霊譚である。

去年の都知事選で厚化粧という言葉がちょっとした流行語になっていたが、年末の流行語大賞の候補にはならなかった。

そもそも厚化粧とはどんな意味なのかを辞典で調べてみた。それによると、おしろい、口紅などを濃くつけ、けばけばしい化粧をすることとある。

化粧をする人から見ればその目的は、相手から少しでもきれいにみられたい、好感を与えたいということであり、要するに魅力的な自分を表現したいのである。昔は魔物を追い払うために恐ろしく見せる化粧をした場合もあったが、これは例外である。いずれにせよ化粧により好感度がアップすれば成功なのだ。

試しに毎日レビを見ていると、厚化粧をしていない女性はいないといってもよい。一見してどの女性も結構塗りたくっている。老いも若きも見事なレベルにまで化粧している。中にはわざと行き過ぎたレベルでやっている場合があるが。

テレビでは男性だって化粧して塗りたくって、白や赤になってでてくるが、それはこの場の議論ではない。

当時フジテレビの午後ワイドに出た小池百合子さんが司会者の安藤さんの質問に「あなた(安藤)も随分(厚化粧と)言われたでしょう」というようなことを返すと、「そうです」と答えていたのが、妙に自然なやりとりで好感すら覚えた。

辞典を読むと、化粧は少々濃くて、下品でけばけばしいのを厚化粧と揶揄するのであり、けばけばしくないのは厚化粧とは言わないのかも知れない。

去年短編小説「片袖の女」を書いていたときに、厚化粧がクローズアップされた。そこで山中で出てくる女の幽霊は厚化粧にしなければならないと考えたが、
書こうと思っている短編小説の有力なヒントを、ここで一つ見つけたのだ。

小説は4月に地方の雑誌で出版されたが、「片袖の女」は東京都知事選挙の影響を少し受けたようである。いま読み返してそう思う。


            (金沢市立玉川図書館近世史料館)

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